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山口和幸のアレアレ!さいたまクリテリウム
#1 スポーツイベントは町の魅力を発信する絶好機

17/08/29さいクリ広報部

23日間にわたって町から町へと移動するツール・ド・フランスは毎年コースが大きく変わるのが魅力でもある。各地の自治体が誘致合戦を繰り広げ、まずは各ステージのスタートとゴールが決まる。それがパズルのように組み合わせられて全日程が作り出されていく。

スタートあるいはゴールの招致に成功した町はいわゆる大会協力金を支払って、欧州文化の代名詞ともいわれるこの伝統的スポーツイベントのホスト役となるのだが、世界中から集まる観光客、その町の名前が発信されるPR効果などで経済波及効果は計り知れないと言われる。

©ASO/Alex BROADWAY

スタートやゴールの町はお金だけでなく、フランスの二系統の警察、憲兵隊とポリスナシオナルへの警備要請、ボランティアによるホスピタリティなどで大会を全面的に支援する。とりわけボランティアの存在は世界各国からやってくるボクたち取材陣にとっても接する機会が多いだけに、ことのほか頼もしく感じる。

©ASO/Pauline BALLET

ホストシティの顔ともいえるのがその町のいいところ、特産物や観光名所を案内してくれる広報スタッフだ。こういった地元の人との交流はとても興味深く、直接言葉を交わすからネット検索や文献よりも強いパワーを持つ。世界中に配信される記事にその町のにおいや地域性が織り込まれることに貢献しているのは間違いない。

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」も本場に負けじと2017年に「さいクリ広報部」を発足させた。「さいクリ」とはたぶん若者コトバの大会略称で、その「広報部」は市内大学生が集まって若い世代に情報拡散することを目指して結成されたらしい。その部長職に、Ray専属モデルとして人気の松元絵里花さんが起用された。
「自転車に関してはまだまだ初心者ですが、これからサイクリングなどさまざまな経験をしながら、自分の目線で感じたことを発信していきたいです。その結果として、少しでも同世代の子たちが自転車やさいたまを好きになってくれるとうれしいです」

自転車は福岡県在住時に通学で乗っていた程度だというが、最新のスポーツバイクに興味津々。「グルメを楽しむためにサイクリングしたり、出会った風景の中に自転車を入れ込んで写真を撮ったりしたいです」と語り、マイバイクを選ぶための知識も身につけたいという。

「最初は9人編成のチームでリレーをするのかと思いました」というくらいツール・ド・フランスのことは知らなかったようだが、就任要請があってからは猛勉強。カッコいいと思う選手は?という質問に記者クラブの記者さんたちが「キッテルだろ」「キッテルですよね」「そりゃキッテルって言うだろ」とつぶやいていたら「エステバン・チャベス」というハイレベルな返答にガクッ。

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

ちなみにエステバン・チャベスはヨーロッパのスポーツ記者が選ぶ「最もメディアフレンドリーな選手」大賞に選ばれた選手で、いつもニコニコしていて好感度抜群。JSPORTSを2〜3年視聴している自転車ファンならご存知だろうが、一般記者には「だれソレ?」な感ありで、初期段階からかなりハイペースな急増マニアぶりをうかがわせた。

ツール・ド・フランスの出場選手やルールをよく知るマニアックなファン層もいれば、「リレーじゃないの?」くらいに概要を知らない一般の人もいる。フランス各地の広報スタッフがまったく現地のことが分からない外国人記者をいざなってくれるように、まだこの「世界屈指のスポーツイベント」の魅力を知らない人たちに情報発信するのが松元広報部長の役割でもある。

これからどんな目線で、どんな言葉でSNSを通じて発信していくのか。頼もしいような、コワいような。

文:山口 和幸

 

山口和幸
スポーツジャーナリスト。日本国内におけるツール・ド・フランスを取材する第一人者。
1989 年にツール・ド・フランス初取材、1997 年から現在まで、全日程を取材している。
著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」など。今年のツール・ド・フランス現場からのツイートは @PRESSPORTS か、ハッシュタグ #山口和幸 でご覧いただけます。

※タイトルに含まれている「アレ」は」フランス語で「行け」を意味します

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