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【山口和幸コラム】#2
ツール・ド・フランスのなかに生きている人たち(後編)

18/08/31その他

ツール・ド・フランス取材歴約30年のスポーツジャーナリストの山口和幸氏が、今年も現地の様子をご紹介。
ツール・ド・フランスの魅力は、感動と興奮で溢れるスペクタクルなレースだけには留まりません。大会を迎える町と、そこに暮らす人々との関わりあいの中にも、たくさんの魅力が詰まっています。
今回は、現地を訪れることでしかわからない発見を山口氏がコラムで綴ります。



スポーツだけじゃない魅惑のコンテンツ

日本で国際放送のライブ中継を見ていると、それは興奮の頂点だけを延々と撮り続けているだけに、ツール・ド・フランスのすべてが興奮と感動と一大スペクタクルな展開で心ときめくものであると錯覚してしまいがちだ。ところが現地に出向いた人が出会うツール・ド・フランスは、まったく拍子抜けするほどのどかで、ほのぼのとしている。

それはどうしてかと言えば、ツール・ド・フランスがコンペティションである部分は10分の1に過ぎず、それ以外は夏祭りであったり、地域の社交や経済活動の場であったり、そして優雅なバカンスを楽しむ庶民の生活の一部であるからだ。つまりは勝った負けたのスポーツではないのです。

© ASO

そう思うと納得できるのは、コラム途中で紹介した町の人たちの身のこなし方だ。世界に誇る夏の祭りを自分たちの生まれ故郷に招き入れる。多くの観光客や関係者が集まってお金を落としてくれるのはそれはそれでありがたいことなのだが、それよりもこの町の魅力を知ってくれよ!おいしいワインとチーズあるからさ。そんな気概にあふれた人たちなのだから、レース展開なんてまったく分からない迂回路の道ばたに立って、迷子になりそうなボクを満面のほほえみで誘導してくれる。

ここまでできるスポーツイベントなんてあんまりない。そしてそんな博愛精神に接することができる人間もそれほど多くない。ツール・ド・フランスのそんな本質を知ることで、これからの人生が深くなったり、生活に楽しさが増すような感じがする。それが「ビブ・ル・ツール!ボクたちはツール・ド・フランスの中に生きているのさ」ってことなのだ。ツール・ド・フランスは単なるスポーツイベントではなく、その場に足を向けたすべての人のライフスタイルを充実したものに変えてしまう魅惑のコンテンツなのである。

さて、8月31日(金)に東京・南青山のライフクリエーションスペースOVEで2018ツール・ド・フランス報告会を開催します。現地から戻ったボクも登壇するのですが、スポーツイベントの経済・社会効果に詳しい東海大学体育学部の押見大地博士も専門的な観点からお話しをいただくことになりました。ご興味のある人はぜひご参加ください。

文:山口 和幸


8月31日(金)南青山「OVE」にてさいたまクリテリウムトークショー開催!

~観覧者40名募集!さいたまクリテリウム観覧席入場券が当たる抽選会も実施~(※募集は締切ました)

トークショーの様子は、さいたまクリテリウム公式Twitter(@saitamacrite)にてライブ配信いたします!ご興味のある方は、ぜひTwitterからご視聴ください !


山口和幸
スポーツジャーナリスト。日本国内におけるツール・ド・フランスを取材する第一人者。1989 年にツール・ド・フランス初取材、1997 年から現在まで、全日程を取材している。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」など。今年のツール・ド・フランス現場からのツイートは@PRESSPORTSか、ハッシュタグ「#山口和幸」でご覧いただけます。

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