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【写真判定(7/8更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #3

19/07/08その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


写真判定 (7/8)

ツール・ド・フランスをはじめとする国際的なロードレースでは、電子計測システムと写真判定の併用でゴールの着順やタイム差を算出している。すべての選手の自転車にはフレームのどこかに計測用の発信器が取り付けられている。ゴールラインに置かれた受信機でそれぞれの信号を感知し、瞬時にコンピュータ上に記録が表示される。

ただしフレームに取り付けられる位置によって実際の着順とは誤差が生じる。そのため電子計測システムはあくまでも参考だ。正式の着順は審判団の目視と、接戦の場合はゴールを真横から撮影している写真によって判断される。これがいわゆる「フォトフィニッシュ」だ。

自転車ロードレースは前輪の一番先の部分がゴールラインを通過した順番で成績が決められる。写真判定はわずか1cm差の大接戦でも判別できるほど精巧だ。タイム差もコンマレベルで算出が可能。 先着を確信した選手がガッツポーズでゴールするのがよく見られるが、たまに写真判定の結果わずかな差で負けていたという例もある。


自転車ロードレースはもう一つ、特殊なルールがある。同一集団でゴールした選手はすべて同タイムになる。これは1秒でもタイムを稼ごうとして集団の中で不用意な落車が発生するのを回避するため。選手が途切れることなくひとつのかたまりとしてゴールラインを通過したら、それが176人いようと1着も176位も同タイムだ。

乱暴に言ってしまえば、ロードレースは1着だけが賞賛されるもので、それ以外は2位も最下位も同じという評論のゆえんだ。厳密にはボーナスタイムやポイント賞の得点が関わるので、上位は写真判定で厳密に着順を確認するが、30位以降は大勢に影響がないので電子計測の表示をそのまま適用する。だからツール・ド・フランスの成績発表は世界で一番早いのだ。

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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