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【キャラバン隊(7/13更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #8

19/07/13その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


キャラバン隊 (7/13)

ツール・ド・フランスの魅力はプロ選手によるバトルだけではない。沿道のファンにとっては、レースの1時間前にやってくる広告キャラバン隊も楽しみのひとつだ。これはツール・ド・フランス名物の宣伝カー部隊。若くて元気な男女が軽いノリの音楽に乗って笑顔を振りまき、商品サンプルやキャップなどの拡販グッズを沿道にバラまきながら通過するのだ。

広告キャラバン隊はおよそ40社、600人。合計200台の車両に分乗して、23日間で1,200万個のおみやげを沿道にバラまく。ちょっと前に調査した金額だが、クルマ5台が1ユニットとなり、参加するためには約400万円を主催者に支払う。1台追加するごとにプラス100万円だ。

キャラバン隊のスタッフとは宿泊ホテルのグレードが同レベルなので、ボクはよく遭遇する。それにしてもみんなある意味、選手以上にタフだ。

大会の中で彼らはそれほど優遇されていないので、レース後の大渋滞が緩和してからホテルに向かい、給油や洗車、翌日のグッズの補充をする。夜遅くにようやく食事にありつき、夜更けまで会話がはずむ。それでいながら翌日にボクたちが目覚めたときには、すでにスタート地点に向かっている。

各車両は日本だったら確実に認められないような装飾を施す。サンルーフや仮設ステップでダンスする若者たちは、スカイダイバーが装着するような安全ベルトと命綱で固定される。どんなに疲れていても、沿道に愛想よく手を振り、笑顔を絶やさない。女のコでも移動中はトイレを我慢するんだろう。

休日も振り付けのチェックをホテルの駐車場でしていたり…。華やかさの中には涙ぐましい努力がある。23日間の全日程を頑張っているのは選手だけではないのだ。

広告キャラバン隊になるのはフランスの若者たちの憧れだ。期間中はモデルやタレントのように注目される。そして華やかな世界は同時に男女の出会いの機会だ。基本的に男性運転手と後部シートなどでグッズを配布する女性という組み合わせ。カップルになるのも自然のなりゆきだ。

開幕時にケータイメールをやりとりしていたばかりなのに、若い情熱に任せてつかの間の愛が芽生えたり、感情がもつれたり。ペアが変わったりすることもしょっちゅうだ。テレビバラエティを見ているより白熱した人間模様が演じられていく。「自由・平等・博愛」の国フランスは恋愛も自由だからなあ。


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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