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【ペイント(7/23更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #16

19/07/23その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


ペイント (7/23)

ツール・ド・フランスの名物シーンと言えば勝負どころの山岳に大観衆が押し寄せて熱狂的な声援を送るところ。観戦ポイントの峠は数時間前から、場合によっては前日から交通規制され、観衆は歩いて峠を目指すか、前日入りして道端で時間をつぶすしかない。

熱心なファンはキャンピングカーやクルマで沿道に乗りつけてベストポジションに陣取る。白いペンキ缶とローラーを取り出して、沿道に応援する選手の名前を描く。これが山岳ステージの風物詩ともなっている。

日本でこんなことをやれば器物損壊の軽犯罪に問われるが、フランスでは警官も憲兵隊も見て見ぬふりだ。それどころかユニークなペイントに大喜びしている。

ペンキだけに乾くまではベタベタとくっつく。交通規制後も走ってくる関係車両が踏みつけると、せっかく描いた文字が台なしになる。それを防ぐために文字の前に仁王立ちになってクルマを迂回させるファンもいる。

赤い衣装を全身に身にまとい、ヤリをふりかざして応援する有名人、悪魔おじさんもペイントの達人。各ステージの残り20kmほどの沿道に拠点を置く悪魔は、その手前から路面に小さなヤリのペイントを描く。そのため選手や関係車両がそれを見つけると、「お、そろそろ悪魔が出現するな」とわかるのである。

手書きのペイント文字はワンシーズン経っても薄く残っているので、毎年のようにコースになる山岳は選手を応援する文字が重ね書きされる。


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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