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【歴代最僅差(7/26更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #19

19/07/26その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


歴代最僅差 (7/26)

1989年は100年の歴史の中でも、間違いなく最も劇的な幕開けと幕切れが演じられた大会だった。

ルクセンブルクで行われた初日の個人タイムトライアル。前年の覇者で、マイヨジョーヌを着て最後に登場するスペインのペドロ・デルガドがスタート時間に遅刻したのだ。あわててスタート台に飛び乗って2分40秒遅れでコースに飛び出したが、結果は最下位の198位。2日目のチームタイムトライアルでもデルガドが大ブレーキで、致命的となる7分20秒差が首位とついてしまう。

第5ステージの個人タイムトライアルで、思いもよらぬ選手がトップタイムをたたき出して首位に躍り出た。1986年の優勝以来、3年ぶりにツールに戻ってきた米国のグレッグ・レモンだ。初優勝後のオフで猟銃の暴発事故に遭い、生死の境をさまよったほどで、選手としてはもはや期待されていなかったからだ。レモンはトライアスロン選手が使用するエアロハンドルバーを導入し、みごとな復活を遂げた。

ピレネーではスペインファンの声援に押されてデルガドが徐々にタイムを挽回したが、首位に躍り出たのは5年ぶり3度目の優勝をねらうフランスのローラン・フィニョンだった。レモンはアルプスの山岳タイムトライアルでマイヨジョーヌを奪い返すが、ラルプデュエズでフィニョンに再び逆転された。

フィニョンはレモンに50秒差をつけて最終日を迎えた。この年は凱旋パレードではなく、ベルサイユからシャンゼリゼまでの24・5キロ個人タイムトライアルが設定されていた。過去2回のタイムトライアルでエアロハンドルバーを使ってマイヨジョーヌを奪ったレモンは、この日も同様の走りを見せた。このときレモンが記録した平均時速54・545キロは現在も破られていない最高速。

フィニョンは58秒遅れで、レモンが総合成績でわずか8秒差で逆転優勝した。これはツール史上最僅差。最終日の逆転劇は1947年のロビック、1968年のヤンセンに次ぐ3回目の出来事だった。


グレッグ・レモンはいまでもツール・ド・フランスの現場に足を運んでいる

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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