ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムとは?
世界最大にして最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスが100回目の開催を実現した2013年、世界で初めて「ツール・ド・フランスの名を冠した大会」として始まったのがツール・ド・フランスさいたまクリテリウムだ。その夏に行なわれたツール・ド・フランスの総合優勝者をはじめ、区間勝利や各賞を獲得するなど大活躍したプロ選手がこぞって来日する。コロナ禍による2年間の休止を乗り越えて、2024年に第10回記念大会。そしていよいよ2025年は次のフェーズとなる11回目の開催を迎える。
そもそもツール・ド・フランスは「地上で最も過酷なレース」として1903年に誕生した。欧州メディアでは五輪とサッカーW杯とともに世界三大スポーツイベントとして紹介される。その中で毎年開催されるのはもちろんツール・ド・フランスしかない。それぞれ4年に一度は開催日程が重複、あるいは紙一重となるが「五輪やサッカーW杯」と「ツール・ド・フランス」は常にお互いをリスペクトし、日程調整するなどで世界のスポーツファンにその魅力を発信し続けている。
そんなスポーツが開催地から遠く離れた日本のさいたま市で目撃できるのだから、これはもう世界中の自転車好きがうらやましく思うのも当然だ。世界190カ国に国際中継されるグローバルなツール・ド・フランスブランドをそのままに、選手だけでなく運営スタッフやメディアが来日し、看板などの小道具さえもツール・ド・フランスで使われたものが持ち込まれる。舞台はさいたま新都心の高層ビル群。距離の短い周回コースが設定され、沿道に立てば世界最高峰のスピード感が何度も味わえる。
これまで自転車レースなんて見たことがない人に注目してもらいたいのはツール・ド・フランスが身にまとう本場の文化だ。120年にわたって築かれた大会はフランスをはじめとした欧州の社会や人たちの伝統・慣習・社交・経済・宗教観などのあらゆるものの影響を受けて成熟していった。どことなくオシャレ。気分が高揚して胸がドキドキする。会場にはおいしそうなにおいがただよい、子どもたちからお年寄りまでの笑顔があふれる。
日本にはないものもあるが、日本の原風景に通じるところも意外とある。誰が勝ったというのも興味のひとつだが、わが町にやってきたサーカス団の熱気に驚いた幼少期の記憶が蘇るような…。そんなツール・ド・フランスの雰囲気やにおいを感じるために沿道に足を向け、それぞれがその魅力を発見してほしい。
節目となった2024年の第10回大会はこれまで支えてくれた人たちに感謝の気持を伝えたレースだった。それに続く2025年は次の10年に向けて新たなスタートとしてステップアップすることを期待。ただし第1回大会からそのコンセプトは揺るがない。「さいたまにツール・ド・フランスがやってきた!」。あのときの感動と興奮はけっして忘れることはない。
文 山口和幸=ツール・ド・フランス取材記者
















