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山口和幸のアレアレ!さいたまクリテリウム
#2 ツール・ド・フランスを迎える町は4賞カラーを飾って歓迎する

17/09/07さいクリ広報部

ツール・ド・フランスのシンボルカラーは、ひまわりのように鮮やかな黄色だ。個人総合1位の選手が着用する栄光のジャージ、「マイヨジョーヌ」の色である。マイヨはジャージ、ジョーヌは黄色という意味のフランス語だ。ただし1903年の第1回大会からあったわけではない。

第一次世界大戦による4年間の開催中止を経て、1919年にツール・ド・フランスは再開された。この第13回大会で初めて「マイヨジョーヌ」が登場した。
「集団の中でだれが首位の選手なのかを見分けられるようにしてほしい」という新聞記者からの要望だった。シンボルカラーを黄色にしたのは、主催するスポーツ新聞「ロト=現在のレキップ」の紙の色が当時は黄色だったからだ。

©ASO/Alex BROADWAY

ちなみに二大大会のもうひとつ、ジロ・デ・イタリアのリーダージャージはマリアローザ(ピンク色のジャージというイタリア語)だが、こちらも主催紙「ラ・ガゼッタデッロスポルト」の色が薄桃色だったため。

このイメージカラーは大会の象徴であり、ツール・ド・フランスのコースとなった町は黄色をあしらったさまざまなオブジェで彩られる。ジロ・デ・イタリアはもちろんこれがピンク色となる。さらにその後制定されたポイント賞の緑ジャージ、山岳賞の白地に赤豆の入ったジャージ、新人賞の純白ジャージも加わって、ショーウインドウや民家の窓辺は黄色をメインとしつつ、緑や赤玉や白で鮮やかに装飾される。みんなこの自転車レースが大好きで、大人も子どもも鮮やかに彩ることで歓迎の意を表し、憧れの選手たちを迎えるのである。

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

ショーウインドウや自宅の軒先に愛用する自転車や往年のサイクリングジャージをディスプレーするのもよく見かける。年代モノの自転車もそれほど珍しくなく、どれも博物館にあるようなものばかりだが、太めのタイヤにしっかりと空気が入り、チェーンにオイルが塗られている。つまり現役として乗っていたりするわけだ。

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

ヨーロッパの人はモノを大切にするというが、とりわけ自転車に対する愛着心は強い。自転車が1台あれば自分の力で隣町に行ける。プロ選手ほどじゃないけどそこそこのスピードは出せる。だからその自転車を使った真夏の大レースは親近感にあふれ、ボクたちサイクリストの代表であるプロレーサーを尊敬し、応援する気持ちは特別のものがある。

©Kazuyuki YAMAGUCHI(PRESSPORTS)

ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムの開催100日前となる7月27日に、大会PRイベントが実施された。これが本場ツール・ド・フランスのエッセンスを巧みに吸収し、日本的なおもてなし心を加えた新たな試みだった。

この日、JRさいたま新都心駅の東西自由通路は、両大会のシンボルカラーの黄色で装飾された。清水勇人さいたま市長(2017さいたまクリテリウム実行委員会会長)と、市内大学生の有志で組織された「さいクリ広報部員」18人がチラシ配布などを行ったのだが、それだけでない。広報部員は多くの人に目を留めてもらえるように、SNSを通じて大会の盛り上がりぶりを拡散することを目的として、223個の風船を使って4賞ジャージと自転車のバルーンアートを制作。「また今年も開催時期が近づいてきたんだね」と多くの市民が大会の存在を再認識することに貢献したはずだ。

©Saitama city

©Saitama city

©Saitama city

開催100日前イベントに参加したのは埼玉県内にキャンパスがある共栄大の学生たち。学生がスポーツを通じて地元に関わる機会やスポーツイベントを経験できる場として大会側が「さいクリ広報部」設立を提案。イベントの企画立案や運営体験を通して、スポーツビジネスを学習する実体験の場として官学連携が実現した。

©Saitama city

「本番を成功させるためにさまざまな人が関わっていることが分かりました。今後仕事をする上や大学で学んでいることに役に立つと思い、とても勉強になりました」

「埼玉県内にもこんなに素敵なイベントがあることを知ることができました。海外からの選手が来るなど、国際的な交流も望めるのでとてもいいと思いました」

部員たちの熱い思いはきっと市民にも届いたはずだ。フランスの人たちのようにコース沿道の店舗などで4賞カラーの装飾が自主的に飾られるようになる日もそう遠くはないかも知れない。お気に入りの愛車をショーウインドウに展示して選手来日を心待ちにする機運が自然と盛り上がっていく。開催100日前イベントは「自転車のある快適ライフ」を未来に提案するきっかけづくりとなったはずだ。

文:山口 和幸

 

山口和幸
スポーツジャーナリスト。日本国内におけるツール・ド・フランスを取材する第一人者。
1989 年にツール・ド・フランス初取材、1997 年から現在まで、全日程を取材している。
著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」など。今年のツール・ド・フランス現場からのツイートは @PRESSPORTS か、ハッシュタグ #山口和幸 でご覧いただけます。

※タイトルに含まれている「アレ」は」フランス語で「行け」を意味します

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