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【外国訪問(7/11更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #6

19/07/11その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


外国訪問 (7/11)

ツール・ド・フランスの「ツール」は「一周」という意味なので、ツール・ド・フランスを直訳すればフランス一周。23日間かけて国土をグルッと一周するのが基本だが、たまに話題性喚起のために国境を越えて外国を訪問することも多い。

開幕地を外国にすることもある。特に4年に一度のサッカーW杯とは開催日が重なることから、ツール・ド・フランスは必ず国外に出る。1998年フランス大会のときは3位決定戦と決勝の日程がツール・ド・フランスの初日と2日目に重なったが、このときはアイルランドのダブリンを走った。
2002日韓大会のときはルクセンブルク、2006ドイツ大会は開幕こそフランス国内だったが大会日程が9日間も重なったため、その時期はベネルクス3国を縦走。そして2010南アフリカ大会ではオランダで開幕している。2019年は女子サッカーW杯と2日間重複するので、その期間は隣国ベルギーを訪問しているのである。

大会途中で隣国を訪問することはよくある。アルプスの峠を越えてイタリアへ。ピレネーを越えてスペインへ。ライン川を渡ってドイツへ。スイスのジュネーブあたりで平坦路を走っていたら気づかぬうちに国境を越えているし、ベルギーやルクセンブルクもそうだ。
10年以上前はピレネー山中の小国アンドラを訪問することも多かった。税金がない買い物天国で、ホテルやガソリンも安い。そのため主催者は休養日をここで過ごすのだが、ユーロ通貨統一で安定し、物価に大差がなくなった近年はわざわざ訪問しなくなってしまった。
EU統合後は国境といっても検問所の名残がある程度で、選手も関係者もスピードを緩めることなく通過していく。スマホ画面に表示される電話会社名は替わるが、英国とスイスをのぞいて通貨はそのまま使える。

でもやはりツール・ド・フランスがフランスを出ると違和感がある。町の作りや道路標識、ドライバー同士の間の置き方、歩行者が道路を横断するタイミングなどすべてが異なるのだ。よくツール・ド・フランスが海外に出たときに大きな落車が発生するのはそのため。中央分離帯やロータリーの位置や深さが微妙に異なり、フェンスや観客のポジションが変わる。フランスだったらゴール前の中央分離帯は工事で撤去してしまうが、さすがに海外ではそれはできない。
海外を走るツール・ド・フランスはやっぱりどこかビミョー。1〜2日の外国ステージからフランスに戻ると、母国に帰ったようにホッとする。


ブリュッセル、グランプラス広場 © Milo Profi

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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