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【ゾーンテクニック(7/15更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #10

19/07/15その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


ゾーンテクニック (7/15)

ツール・ド・フランスの各ステージには当然のようにスタートとゴールがある。どちらの規模が大きいかというと、それは圧倒的に後者だ。スタートに選手や取材陣が滞在するのは長くて2〜3時間だが、ゴールは1日がかりで選手の到着を待ち受ける関係者でごった返すからだ。

非常に広大な設営スペースを必要とするのも特徴だ。ゴール地点の横にはゾーンテクニックというテレビ中継車のスペースが用意される。100台以上の巨大車両が入り乱れ、数千本のケーブルが道路をのたうちまわる。レースを生中継する各国メイン局の技術陣が周到にセッティングしたのだ。

テレビの裏方である彼らはきっと夜のうちに現地入りして、中継の準備を済ませておくのだろう。午後3時ころにシャワーを浴びたり、ヒゲをそっている姿をよく見かける。そう、このゾーンには仮設シャワーや洗面所もある。木陰や車両の下にビーチチェアを置いて、いびきをかいている連中もいる。

一度、彼らの一人に「レースに興味はないの?」と質問したことがある。答えは明確。

「ないね。これはオレの仕事だからね」と誇りを胸に語っていた。それはそれでプロフェッショナルだ。テレビ画面に登場するキャスターや解説者がゴールに登場するのは、技術陣が一息ついて顔を洗っているころだ。

国際映像を配給するフランステレビジョンのスタッフは少なくとも200人以上。専属コックや皿洗い、数台の食材車が帯同し、大型テントを張り巡らせたテーブル&チェアでスタッフに食事を提供している。

ワインにいたっては木箱で搬入される。フランス人の食事にワインは欠かせないからね。あたりには美味しそうな匂いとワインの芳香が充満。彼らは23日間、こんな生活をしながらフランスを一周していく。

こうして技術陣はレース展開に一喜一憂することもなく、ゴールの瞬間を迎える。生中継が終わり、夜の特番が終わり、表彰台などのゴール地点の撤去が終わってから、ようやく中継車が動かせるようになる。それから夜通しかけて次のゴール地点まで移動。レース中に木陰で寝るしかないよね。


国際映像を制作するフランステレビジョンの屋外仮設食堂

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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