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【憲兵隊(7/18更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #12

19/07/18その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


憲兵隊 (7/18)

フランスにはポリスナシオナルとジャンダルムリ(憲兵隊)という2系統の警察があって、それぞれがツール・ド・フランスを全面的にサポートする。9000人のポリスと1万2000人の憲兵隊が、コースに合流するすべての脇道に立つのだから壮観だ。

どちらもピストルを携帯し、犯罪者の逮捕権限を持つが、日本ではなじみがない憲兵隊のほうがフランスっぽい。これは軍隊直属の警察機構で、大統領の護衛をはじめ、町なかの交通整理や取り締まりなどを担当する。

ツール・ド・フランスではその中から選りすぐられたエリート50人がオートバイに乗って全日程に帯同する。長くて引き締まった脚が強調できる紺色のズボン、黒のロングブーツが特徴。集合場所ではオートバイを1cmの乱れもなく整然と並べる。

国境越えのステージでは、他国までは追っていかない。ライン川ならドイツ警察に、アルプスの峠ならイタリアやスイスの警察にバトンタッチだ。沿道の観衆から選手と同じくらいの歓声を浴びて、彼らの表情も誇らしげだ。

ひとにぎりのエリート以外は、みんな道端で立哨する憲兵隊員だ。派遣された場所が日陰ならいいが、1日じゅう強い日差しの中に立っている隊員は相当大変だろう。

広告キャラバン隊が通過するときも任務に忠実だが、キャラバン隊が気を利かせて憲兵隊員におみやげを投げてやると、大事そうにポケットにしまい込む姿がかわいい。もちろんポリスや憲兵隊のPR担当も広告キャラバン隊の一部に加わって、新隊員募集をしっかりアピールしている。隊員の手当てが大会から出ることはないが、全面協力の見返りとして彼らの存在意義を伝える機会を提供しているのだ。

各隊員はクルマから降ろされたときにサンドイッチと水を持たされ、それを近くの草むらに隠しておく。かつてはプライドがあって、口にするところを見られないというのが美学だった。

ところが今年は沿道の憲兵隊員にも変化が感じられる。あまりにも退屈だからってスマホに夢中のヤツが何人もいる。このヤロ、ちゃんと仕事しろよ。


憲兵隊のバイクは見事に整列して駐輪しているが、「アバンセ(もっと前に)」とか「セボン(オッケー)」などと指示する係がいる

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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