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【ほうき車(7/21更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #15

19/07/21その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


ほうき車 (7/21)

選手団の後ろに追従する関係車両としては審判車やサポートカーが知られるが、隊列の最後尾に位置するのが「ボワチュールバレ」。バレとは「ほうき」という意味で、つまりリタイア選手をはいて道路をきれいにしていくという役目を担ったイジワルな収容車だ。

マイヨジョーヌ獲得やステージ1勝を夢見てツール・ド・フランスに参戦する選手たち。それがかなわなければ、完走してパリ・シャンゼリゼにたどり着きたい。しかし現実は甘くない。予期せぬ落車やメカトラブル、悪天候などで体力を使い果たした選手たちはコース途中で自転車を降り、背中のゼッケンをはぎ取られる。そしていやおうなくボワチュールバレに乗らなければならないのだ。

かつてのボワチュールバレは、車両の前部に本物の「ほうき」をくくりつけて走っていた。別名「ほうき車」。それはフランス人のエスプリなのだが、リタイアした選手にとっては屈辱以外のなにものでもない。

「オレはゴミくずか!」と吐き捨てるだろう。

いつしかボディにほうきのイラストが描かれるようになり、そして現在はそんないたずらゴコロは一切排除された。

現在のボワチュールバレは収容能力20人ほどのマイクロバス。これなら乗っていた自転車もそのまま積み込める。コース途中で負傷して救急車に乗り込んでもリタイア扱い。サポートカーに乗ってもその瞬間にリタイア。ゴールにたどり着いても制限時間オーバーで失格になることもある。翌日のスタート時に出走しなくてもリタイア。

関係車両も故障などでリタイアすることがあるが、その場合は大小のレッカー車が牽引あるいは搭載してゴールの町の修理工場まで連れていってくれる。こっちのほうはボクもお世話になったことがある。

23日間のステージレースは徐々にその数を減らしていき、最後まで生き残った選手だけがパリ・シャンゼリゼに凱旋する。


近年の回収車は「ほうき」の現物のイラストも撤廃された

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

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