お知らせNEWS & TOPICS

【休息日(7/14更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #9

19/07/14その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


休息日 (7/14)

近年のツール・ド・フランスは3週間と2日、つまり23日間の日程で開催される。要するに土日で始まり3週目の土日で終わるというわけだ。この23日間という最長のステージレースはジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャの3大会しかなく、近年は国際自転車競技連合の名の下にさまざまなルールが規定されている。

そのなかでも特徴的なのが「2日間の休息日を日程に組み入れること」だ。つまり最近のツール・ド・フランスは21レースと休息日2日で構成されているわけだ。もちろん大観客が期待できる週末に休息日が設けられることは興行的にない。疲れがたまり始めた第2週の平日、そして最後の勝負どころに突入する前の第3週の平日に設定される。

取材者としてのボクが確信していることは、休日というのは選手のためにあるわけではないということだ。全日程を追いかける大会主催者、取材陣、スタッフのためのものだと確信している。じつはそれだけ休日設定は絶妙だ。洗濯物がたまる、仕上げなければならない原稿がたまる、ストレスがたまる。すべてを解決して安息を与えてくれるのが休息日なのである。

はたして選手が休息日に体を休めているのかというとそうではない。選手は休息日前日のレースを終えると、たいていはその日のうちに休息日を過ごす町まで移動する。そして休息日はいつもよりのんびりと起床して、50km程度の練習に出発する。23日間も自転車に乗る選手たちだけに、いきなり自転車をこがない日が訪れるとコンディションを落としてしまうからだという。

チームのメカニックやマッサー、主催者、取材陣、広告キャラバン隊たちは休息日のとらえ方がちょっと違う。選手たちは専用機やTGV(高速鉄道)で前日夜までに移動してしまうが、それ以外の関係者はゴール後にいつものように宿泊し、休息日には500km程度の長距離を大移動しないといけないのだ。休息日なんて言葉はとんでもないよ。ボクらにとってあれは単なる移動日だ。

それでも気持ちの上ではリフレッシュ。洗濯も原稿もしっかりと済ませて、心機一転でパリを目指す。23日間の長丁場でちょっとだけ一息つける1日なのである。


休息日のホテル前はサインをもらう絶好のチャンス

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

Back Number










一覧