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総延長3,500kmのコースに合流するすべての道に憲兵隊がいる
ツール・ド・フランスの基礎知識 #11

23/7/12

ツール・ド・フランス2023の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けする、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
今年のテーマは、「ツール・ド・フランスの基礎知識」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載します。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


総延長3,500kmのコースに合流するすべての道に憲兵隊がいる

フランスにはポリスナシオナルとジャンダルムリ(憲兵隊)という2系統の警察があって、それぞれがツール・ド・フランスを全面的にサポートする。9,000人のポリスと12,000人の憲兵隊が、コースに合流するすべての脇道に立つのだから壮観だ。

どちらもピストルを携帯し、犯罪者の逮捕権限を持つが、日本ではなじみがない憲兵隊のほうがフランスっぽい。これは軍隊直属の警察機構で、大統領の護衛をはじめ、町なかの交通整理や取り締まりなどを担当する。

ツール・ド・フランスではその中から選りすぐられたエリート50人がオートバイに乗って全日程に帯同する。長くて引き締まった脚が強調できる紺色のズボン、黒のロングブーツが特徴。集合場所ではオートバイを1cmの乱れもなく整然と並べる。

国境越えのステージでは、他国まで深追いはしない。ライン川ならドイツ警察に、アルプスの峠ならイタリアやスイスの警察にバトンタッチだ。沿道の観衆から選手と同じくらいの歓声を浴びて、彼らの表情も誇らしげだ。

こういったひとにぎりのエリート以外は、みんな道端で立哨する憲兵隊員だ。派遣された場所が日陰ならいいが、1日じゅう強い日差しの中に立っている隊員は相当大変だろう。

広告キャラバン隊が通過するときも任務に忠実だが、キャラバン隊が気を利かせて憲兵隊員におみやげを投げてやると、大事そうにポケットにしまい込む姿がかわいい。もちろんポリスや憲兵隊のPR担当も広告キャラバン隊の一部に加わって、新隊員募集をしっかりアピールしている。隊員の手当てが大会から出ることはないが、全面協力の見返りとして彼らの存在意義を伝える機会を提供しているのだ。

各隊員は早朝に集合し、持ち場に到着するとクルマから降ろされる。このときにサンドイッチと水を持たされ、それを近くの草むらに隠しておく。かつてはプライドがあって、口にするところを見られないというのが美学だった。

ところが近年は沿道の憲兵隊員にも変化が感じられる。あまりにも退屈だからってスマホ操作に夢中のヤツが何人もいる。もちろん選手らがやってくるころには任務にシフトするが、レースから23時間ほど先行するボクは彼らのライフスタイルを目撃することしきり。


選手団を先導する憲兵隊の白バイ、ではなくフランスは紺色

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。