お知らせNEWS & TOPICS

【ビラージュ(7/19更新)】
山口和幸の現場30周年ルポ #13

19/07/19その他

ツール・ド・フランス2019の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
現地で取材をして今年で30周年となる山口さんならではのコラムをお楽しみください!


ビラージュ (7/19)

各ステージのスタート地点には、選手や関係者が思い思いに時間を過ごすことができる「ビラージュ」という特別のエリアが登場する。いわば「ツール・ド・フランス村」で、IDカードや招待状の代わりに用意されたリストバンドで立ち入りが厳しく制限される。

選手や関係者が宿泊してにぎわうゴールの町と比べると、スタートの町はあっという間にいなくなってしまう。出資する協力金も少額で済むので小さな町や村が多いのだが、せめてもの盛り上げとして用意されたのが「ビラージュ」だ。

ここには地元の行政や経済界有力者、大会スポンサー、取材陣などが招かれ、地元料理などの特産物が振る舞われる。スタート前の選手たちがやってくることもあるが、くつろぐというよりスポンサーへのサービスという意味合いが強い。プロ選手は走っているだけでいいということはなく、スポンサーのために顔を出すことも重要な役目なのだ。

大会協賛各社も個別にブースを構えて、経済界の活動を活発化させる。このあたりが、ツール・ド・フランスはコンペティションであると同時に社交やフランス経済そのものだといわれるゆえんなのである。

出入り口近くには郵便を出すための黄色いポストが置かれるが、これまで投函する人を目撃したことはない。これはいわば伝統なのだろう。またかつてはワインを振る舞うテーブルもあったが、飲酒運転が厳しく取り締まりされる現在は姿を消した。

ビラージュの裏手には関係者のお弁当配給所などが設置される。トイレもスタート前のラストチャンスで、ゴール地点まで移動する女性たちは必ず立ち寄っていく。

スタート時間が近づくと鐘が鳴らされて、ビラージュの閉店を告げる。関係者は急いでクルマに乗り込み、ゴールを目指して走るわけだ。つかの間の会話。それでもツール・ド・フランスにはなくてはならない空間。どんなに競技性が向上しても、フランス人の社交を大切にする伝統だけは変わらない。


ビラージュは選手の出走サイン台の隣にあることが多い

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi

ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」。大会期間中は、Twitter(@PRESSPORTS)やホームページで現地情報を発信。

Back Number



7/16
PPO












一覧