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かつての選手収容車はホウキをつけて走っていた
ツール・ド・フランスの基礎知識 #15

23/7/16

ツール・ド・フランス2023の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けする、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
今年のテーマは、「ツール・ド・フランスの基礎知識」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載します。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


かつての選手収容車はホウキをつけて走っていた

選手団の後ろに追従する関係車両としては審判車やサポートカーが知られるが、隊列の最後尾に位置するのが「ボワチュールバレ」。バレとは「ホウキ」という意味で、つまり大きく遅れた選手をはいて道路をきれいにしていくという役目を担ったイジワルなリタイア選手収容車だ。

マイヨジョーヌ獲得やステージ1勝を夢見てツール・ド・フランスに参戦する選手たち。それがかなわなければ、完走してパリ・シャンゼリゼにたどり着きたい。しかし現実は甘くない。予期せぬ落車やメカトラブル、悪天候や体調不良で体力を使い果たした選手たちはコース途中で自転車を降り、背中のゼッケンをはぎ取られる。そしていやおうなくボワチュールバレに乗らなければならないのだ。

かつてのボワチュールバレは、車両の前部に本物の「ホウキ」をくくりつけて走っていた。別名「ホウキ車」。それはフランス人のエスプリなのかもしれなかったが、リタイアした選手にとっては屈辱以外のなにものでもない。

「オレはゴミくずか!」と吐き捨てたかもしれない。

いつしかボディにホウキのイラストが描かれるようになり、そして現在はそんないたずらゴコロは一切排除された。

現在のボワチュールバレは収容能力20人ほどのマイクロバス。これなら使用していた自転車もそのまま積み込める。コース途中で負傷して救急車に乗り込んでもリタイア扱い。サポートカーに乗ってもその瞬間にリタイア。ゴールにたどり着いても制限時間オーバーで失格になることもある。翌日のスタート時に出走しなくてもリタイア。

23日間のステージレースは徐々にその数を減らしていき、最後まで生き残った選手だけがパリ・シャンゼリゼに凱旋する。


ボワチュールバレ

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。