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[HISTOIRE - 歴史 - ]1996年にリースが総合優勝したことでデンマーク自転車界が変わった
山口和幸の現地通信 #2

22/7/2

ツール・ド・フランス2022の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
CULTURE(文化)、HISTOIRE(歴史)、VOYAGE(旅)の3つのテーマでランダムにお届けします。
コラムを読んでいるだけで現地を旅する気分が味わえます。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


[HISTOIRE - 歴史 - ]1996年にリースが総合優勝したことでデンマーク自転車界が変わった

1996年のツール・ド・フランスは、スペインのミゲール・インデュラインが大会最多優勝の単独記録となる6勝目に挑んだ大会だった。伝説的自転車選手であるフランスのジャック・アンクティル、ベルギーのエディ・メルクス、そしてフランスのベルナール・イノーを含む4人が5勝で並んでいて、いわゆる「5勝クラブ」と呼ばれていた。スペインの心優しき闘牛士はその最多記録を塗り替えることができるのか?

また、この年はイタリアのポルティに所属する今中大介が日本人プロとして初出場を果たした。第14ステージの中央山塊でタイムオーバーとなって完走を果たすことはなかったが、世界最高峰の大会に日本選手が参加するというセンセーショナルな話題をさらった。

マイヨジョーヌをめぐる本格的な争いはアルプスの第7ステージで始まった。今中のチームエースであるフランスのリュック・ルブランが独走勝利したコースで、無敵艦隊と言われたインデュラインがまさかの大ブレーキを起こす。完全無欠の王者がついにここで遅れを取ったのだ。

この日終わってマイヨジョーヌはロシアの金狼エフゲニー・ベルツィンに。デンマークの伏兵ビャルネ・リースが8秒遅れの総合4位に浮上した。ベルツィンは翌日の山岳タイムトライアルでトップタイムをたたき出し、総合優勝の最有力へと名乗りを挙げた。

続く第9ステージは50年ぶりという寒波に襲われた。カテゴリー超級のイズラン峠が冠雪し、選手は車両でそれを越え、距離を短縮してスタート。ところがその先のガリビエ峠も通行不能となり、ゴールまでわずか46kmという地点からレースが正式スタートとなる。

この常識外れのステージで高速アタックを成功させたリースが後続に僅差をつけて優勝し、初めて首位に立った。ベルツィンは次第に消耗し、総合成績で後退。ピレネーに突入してリースが最難関のステージを制し、そのままマイヨジョーヌを死守。インデュラインの連勝にストップをかけた。

デンマークはもともと北欧の中では自転車競技が強かったが、リースの優勝で自転車を始める人が激増。競技のレベルアップとともに、自転車の魅力を再認識した人たちが生活の中の足として楽しむことになる。

©A.S.O. Lars Moell

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。