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[CULTURE -文化- ]ツール・ド・フランスとサッカーの微妙な関係
山口和幸の現地通信 #10

22/7/12

ツール・ド・フランス2022の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
CULTURE(文化)、HISTOIRE(歴史)、VOYAGE(旅)の3つのテーマでランダムにお届けします。
コラムを読んでいるだけで現地を旅する気分が味わえます。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


[CULTURE -文化- ]ツール・ド・フランスとサッカーの微妙な関係

ツール・ド・フランスは4年に一度、サッカーW杯(ワールドカップ)と、その中間年にUEFA欧州選手権と日程が重なる。世間の関心がサッカーに集まりがちなので、ツール・ド・フランスはその対抗策として海外都市を開幕地にすることで話題をあおる戦略を取ることが多い。

サッカーW杯は前大会まで6月上旬に開幕し、およそ1カ月の日程で開催されてきた。つまり決勝は7月第一週、あるいは第二週の日曜日だ。ということで4年に一度、ツール・ド・フランスはワールドカップとみごとに日程がカブる。

欧州のメディアではオリンピックとワールドカップとともに「世界三大スポーツ大会」と呼ばれるのが世界最大のこの自転車レース。7月第一週の土曜日に開幕し、23日後の日曜日にパリに凱旋するのが基本。スタジアムを飛び出してフランス全土3,500kmを駆け巡るのだから、その規模は三大大会にふさわしい。

日本サッカーが初出場した1998年フランス大会の時、ツール・ド・フランスは開催日程の重複を最小限にとどめようと7月11日開幕と異例の遅さで調整した。やはりスポーツ好きの関心事がサッカーに集まり、そして新聞もテレビもサッカー一色になると、どうしてもツール・ド・フランスへの興味は薄くなってしまうからだ。

1998年フランス大会との重複は、1週間遅らせても2日ある。そこでツール・ド・フランスは大英断を敢行する。開幕からの3日間、アイルランドを舞台にしたのである。これならツール・ド・フランスを見たことがないアイルランド市民が注目してくれる。

その作戦はみごとに的中。そしてフランスサッカー代表チーム「レ・ブルー」は決勝戦でブラジルを破り、初優勝を飾るのである。ツール・ド・フランスがアイルランドを走っているころ、パリのシャンゼリゼ大通りに凱旋したレ・ブルーを大観衆が取り囲んだ光景が印象的だった。

1998年の海外開幕が成功したことで、ツール・ド・フランスは律儀に4年に一度、海外で開幕することが常になった。2002年日韓大会の時はルクセンブルクで開幕。2006年は開幕地としてはフランス国内のストラスブールだったが、W杯が大詰めの決勝リーグを戦っているときはベネルクス三国、ステージ順に言うとルクセンブルク、オランダ、ベルギーを歴訪した。

2010年はオランダのロッテルダムで開幕。そして2014年、W杯とツール・ド・フランスは9日間の重複があり、ツール・ド・フランスは7月5日に英国のリーズで開幕。3日間をかけてロンドンまで南下した。

そして2022年、W杯は中東カタールでの開催となることから、初夏から冬へと開催時期をスライド。ツール・ド・フランスとかぶらない、世にも珍しいシーズンとなった。

アンドラにゴールした夜、同地ではヨーロッパ選手権の決勝があり、多くの人が中継に見入った
©Pressports.com

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。