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ドイツの自転車デザイナーが悪魔おじさんになったわけ
ツール・ド・フランスの基礎知識 #19

23/7/21

ツール・ド・フランス2023の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けする、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
今年のテーマは、「ツール・ド・フランスの基礎知識」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載します。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


ドイツの自転車デザイナーが悪魔おじさんになったわけ

沿道の名物男といえば「ディアブロ」だ。イタリア語で「悪魔」。そうは言っても、だれにでも愛される存在なので、日本語に訳すときは「悪魔おじさん」といった感じになる。

悪魔おじさんは毎年ツール・ド・フランスの全日程を、近年はその一部日程を赤い悪魔の衣装に身を包んで応援する。右手には悪魔の小道具であるヤリを携え、手作りの自転車を沿道にディスプレーして選手や関係者を待ち構えるのである。

国籍はドイツ人。職業は「自転車デザイナー」だともらった名刺には印刷されている。毎年趣向を凝らした「変わり種自転車」を制作して沿道に持ち込んでくるので、ウソではなさそうだ。聞くところによれば、何台かはギネスブックに掲載され、ベルリン近郊にはミュージアムもあるとか。

でも沿道で見る悪魔おじさんの自転車は、バカでかいだけがインパクトで、乗り心地の悪そうなものばかりだった。あまりにも大きいので、いつもキャンピングカーで牽引して旅をしている。

悪魔おじさんはたいていゴールから2030kmほど手前に陣取っている。「このあたりのほうが沿道も窮屈じゃなく、しっかりと応援できるからだ」という。前夜に乗りつけて、買い込んだ食材を自炊して簡素な夕食を済ませ、クルマの中で睡眠を取る。

沿道を走る関係車と見れば、ヤリを振りかざして奇声をあげるのが応援スタイル。でもボクがたまに相当早い時間に通り過ぎると、完全に気が抜けた姿を見かけるときがある。向こうも「見られちゃったなあ」とばかり、片手を軽く上げる程度だ。悪魔おじさんのテンションは常に高いわけじゃない。

かつて話を聞いたときは、「ゴールの手前1kmに赤い逆三角形の旗があるだろ。我が輩は自らをそれになぞらえて赤い衣装を着用するのだ」と語っていた。

ラスト1kmの赤い旗はフラムルージュ(赤の炎)とも呼ばれる。最近はちょっと老けてしまったが、ツール・ド・フランスを愛する気持ちはいまも変わらない。


さいたまの居酒屋でヤリがわりにフォークを突き立てる悪魔おじさん

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。