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[VOYAGE - 旅 - ]ベルギーは文化と物流の十字路
山口和幸の現地通信 #6

22/7/7

ツール・ド・フランス2022の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
CULTURE(文化)、HISTOIRE(歴史)、VOYAGE(旅)の3つのテーマでランダムにお届けします。
コラムを読んでいるだけで現地を旅する気分が味わえます。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


[VOYAGE - 旅 - ]ベルギーは文化と物流の十字路

ツール・ド・フランスが最も多く訪問する外国は隣国ベルギーだ。自転車競技のフィールドとして欠かせない丘陵地が多く、自転車競技史上最強と呼ばれているエディ・メルクスなど数々の名選手を輩出した自転車強豪国でもある。総合優勝の数はフランスの36回に続く18回。3位スペインの12回を大きく上回っている。2022年もさりげなく、第6ステージのスタート地点としてベルギーに足を運んだ。

2004年と2012年にはベルギー東部ワロンヌ地方の中心地リエージュで開幕した。1892年に始まった、現存する大会の中で最古の歴史を持つクラシックレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの発着点として知られる都市である。

歴史の古いリエージュは観光産業も盛んで、料理もビールもおいしい。それが開幕地となる一因でもある。ツール・ド・フランスのコース設計において、「おいしい食べ物と飲み物があるというのは決定的なことだ」と、責任者のベルナール・イノーに聞いたこともある。

ベルギーは西欧州における交通の要衝で、北欧と中央ヨーロッパ、北海と内陸の物流が十字にクロスする。多様で新鮮な食材が海や山からここに運ばれる。おいしいレストランが多いのも当然で、ユネスコの無形文化遺産であるベルギービールが誕生するのも不思議ではない。

地球規模で言えば同じような位置にあるオランダとは生活様式や食文化が明らかに異なるのは宗教に影響されている。質素で敬虔な生活を求められるオランダ。フランス料理に近い多様なガストロノミー、チョコレートなどの嗜好品があふれるベルギー。ツール・ド・フランスがたまに両国を訪問するたびに、ライフスタイルの違いを目撃できるのはとても興味深い。

しかしベルギー勢は1976年のルシアン・バンインプを最後に総合優勝から遠ざかっている。どちらかというと一発勝負のワンデーレース向きで、アルプスやピレネーなどの本格的山岳を連続してこなすのは、コロンビアやスペインの山岳スペシャリストには太刀打ちできないとされる。ツール・ド・フランスの23日間では総合上位を争えない。

かつてのメルクスを知るベルギーファンはちょっと欲求不満のようである。

ベルギービールを飲んでいけよ
©Pressports.com

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。