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黄色いリーダージャージは第1回からあったわけじゃない
ツール・ド・フランスの基礎知識 #1

23/7/1

ツール・ド・フランス2023の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けする、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
今年のテーマは、「ツール・ド・フランスの基礎知識」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載します。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


黄色いリーダージャージは第1回からあったわけじゃない

ツール・ド・フランスにはさまざまな賞が設定されていて、初めてテレビ観戦する人は「どれに注目したらいいのか?」と戸惑ってしまうだろう。しかも大会日程は23日間で、毎日のように各賞の受賞者が変わっていく。日々のステージ優勝者もいれば、総合1位もいる。さらにリーダージャージは4種類。

1990年に来日したベルナール・イノーに「どれが一番エラいのか?」と聞いたことがある。イノーは総合優勝5回の実績を持つフランスの英雄で、当時は主催者の渉外担当として大会の顔とも言える存在だった。

イノーは質問にきっぱりとこう答えた。
「個人総合成績の1位が着用するマイヨジョーヌだ」
さらにこう続けた。
「それ以外はアクセサリーだよ」

個人総合成績で1位の選手は「マイヨジョーヌ」とよばれる特別のジャージを着用して走るというルールがある。マイヨはジャージ、ジョーヌは黄色という意味のフランス語だ。ただし1903年の第1回大会からあったわけではない。

第一次世界大戦による4年間の開催中止を経て、1919年にツール・ド・フランスは再開された。この第13回大会から「マイヨジョーヌ」が登場した。

「集団の中でだれが首位の選手なのかを見分けられるようにしてほしい」という記者からの要望だった。シンボルカラーを黄色にしたのは、主催するスポーツ新聞「ロト=現在のレキップ」の紙の色が当時は黄色だったからだ。

この年の第1ステージで優勝し、初めてマイヨジョーヌを着用したのはウジェーヌ・クリストフだった。1913年のツールマレー峠でフレームを折り、自転車を担いでふもとの村まで14km歩き、村の鍛冶屋に飛び込んで自らの手で溶接してレースを続行したという伝説の選手だ。

しかしマイヨジョーヌを着たクリストフの身に再び不運がふりかかる。総合2位に30分差をつけながら、最後から2番目のステージでフロントフォークを折ってしまい、2時間という致命的な遅れを取る。マイヨジョーヌを手放すことを余儀なくされた。ツール・ド・フランスはこんなストーリーが星の数ほどある。


ツール・ド・フランス2022総合優勝のヨナス・ヴィンゲゴー ©A.S.O. Pauline Ballet

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。