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たまに海外訪問するとちょっとだけツール・ド・フランスらしくない
ツール・ド・フランスの基礎知識 #3

23/7/3

ツール・ド・フランス2023の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けする、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
今年のテーマは、「ツール・ド・フランスの基礎知識」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載します。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


たまに海外訪問するとちょっとだけツール・ド・フランスらしくない

ツール・ド・フランスの「ツール」は「一周」という意味なので、直訳すればフランス一周。23日間かけて国土をグルッと一周するのが基本だが、たまに話題性喚起のために国境を越えて外国を訪問することもあって、それはかなりひんぱんにある。

開幕地そのものを外国にすることもある。特に4年に一度のサッカーW杯とは開催日が重なることから、ツール・ド・フランスはほぼ確実に国外に出る。1998年フランス大会のときは3位決定戦と決勝の日程がツール・ド・フランスの初日と2日目に重なったが、このときはアイルランドのダブリンを走った。

2002日韓大会のときはルクセンブルク、2006ドイツ大会は開幕こそフランス国内だったが大会日程が9日間も重なったため、その時期はベネルクス3国を縦走。そして2010年はオランダ、2014年は英国、2022年はデンマークで開幕している。

大会途中で隣国を訪問することはよくある。アルプスの峠を越えてイタリアへ。ピレネーを越えてスペインへ。ライン川を渡ってドイツへ。スイスのジュネーブあたりで平坦路を走っていたら気づかぬうちに国境を越えているし、ベルギーやルクセンブルクもそうだ。

10年以上前はピレネー山中の小国アンドラを訪問することも多かった。税金がない買い物天国で、ホテルやガソリンも安い。そのため主催者は休養日をここで過ごすのだが、ユーロ通貨統一で安定し、物価に大差がなくなった近年はわざわざ訪問しなくなってしまった。

EU統合後は国境といっても検問所の名残がある程度で、選手も関係者もスピードを緩めることなく通過していく。ケータイの画面に表示される電話会社名は変わるが、英国とスイスをのぞいて通貨はそのまま使える。

でもやはりツール・ド・フランスがフランスを出ると違和感がある。町の作りや道路標識、ドライバー同士の間の置き方、歩行者が道路を横断するタイミングなどすべてが異なるのだ。よくツール・ド・フランスが海外に出たときに大きな落車が発生するのはそのため。中央分離帯やロータリーの位置や深さが微妙に異なり、フェンスや観客のポジションが変わる。フランスだったらゴール前の中央分離帯は工事で撤去してしまうが、さすがに海外ではそれはできない。

海外を走るツール・ド・フランスはやっぱりどこか微妙。1〜2日の外国ステージからフランスに戻ると、母国に帰ったようにホッとする。


2022年の開幕地はデンマークだった ©Pressports.com

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。