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イケメンで大人気だったスペインの山岳スペシャリスト
ツール・ド・フランスの基礎知識 #4

23/7/4

ツール・ド・フランス2023の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けする、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介します!
今年のテーマは、「ツール・ド・フランスの基礎知識」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載します。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!


Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://twitter.com/saitamacrite


イケメンで大人気だったスペインの山岳スペシャリスト

ツール・ド・フランスの初取材となった1989年は、永く語り継がれるほどの名勝負が展開した。いきなりそんなシーンを目撃できたのも、ツール・ド・フランス取材がライフスタイルとなるボクにとっては運命だったかも知れない。

初日は顔見世興行として、距離の短いタイムトライアルが行われることがかつては多かった。最初のマイヨジョーヌをだれが獲得するのかが興味どころで、総合成績にはそれほど影響しないように考えられていた。

ところがこの年、ハプニングが起こった。前年の覇者としてマイヨジョーヌを着用して登場する最終走者が、出走時間になってもこなかったのだ。

前年の覇者はスペインのペドロ・デルガド。セビリア出身のイケメン選手だ。ところがスタート時間に遅刻した。あわてて出走台に飛び上がって走ったものの、時計はすでにカウントされているので記録は最下位だった。

この年はデルガド以外にも千両役者がそろっていた。1986年に米国選手としてツール・ド・フランスを初制覇したグレッグ・レモン。その年のオフ、余暇の狩猟中に仲間の散弾銃が暴発して胸に50発もの弾丸を受け、生死の境をさまよった末の復帰だった。そして大学卒のインテリ・パリジャンとして5年ぶり3度目の優勝をねらうローラン・フィニョン。

デルガドは得意の山岳で挽回したが、結局初日の遅刻が響いて総合3位に。優勝争いはレモンとフィニョンによるシーソーゲームとなった。

最終日はベルサイユからパリ・シャンゼリゼまでの個人タイムトライアル。フィニョンは50秒の貯金をもって最終走者として出発したが、その前を走るレモンが驚異的なスピードで飛ばした。レモンはこの日フィニョンに対して58秒を稼ぎ出し、わずか8秒差で大逆転劇を演じたのだ。

現在、デルガドはスペインテレビ局の解説者として、ますます渋さを増した。レモンはたびたび日本を訪ねていて、ボクも何度か会った。そしてフィニョン、壮絶な癌闘病の末に2010年に他界している。


ベルサイユ宮殿前にて。当時は倒立してクルマのルーフに乗せるのが流行った ©Pressports.com

プロフィール

ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。