ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#21 CHAMPION 2019 新城幸也(後編) 【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/7/21

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2019 新城幸也

グランツール出場16回にして全完走(後編)

2012年に2年ぶり3度目のツール・ド・フランス出場。第4ステージでは敢闘賞を獲得して表彰台に上った。石垣島出身として初めての五輪選手となり、ロンドン五輪に出場。

2016年、リオデジャネイロ五輪の開催年。新城がまさかの大腿骨骨折の重傷を負ったのは2月12日。中東カタールで開催されたツアー・オブ・カタールの最終日だった。翌日に現地で緊急手術を受けたのだが、2日後からリハビリを開始。

19日に現地を離れて帰国へ。東京都北区にある国立スポーツ科学センターで復帰に向けてのプロジェクトが組まれた。3月17日には、まだ松葉杖に頼る新城がリオ五輪のロード代表記者発表に登場した。骨折して35日目だった。日本ナショナルチームの浅田顕ロードヘッドコーチが「五輪でメダルを取れるのは新城しかいないので、代表から外すと考えたことは一度もなかった」と語った。

3月にエアロバイク(室内トレーニングマシン)、4月にはロードバイクでローラー練習、5月にはアウトドアで乗り込みを開始し、毎年冬に行うタイ合宿に出発。乗り込み合宿から帰国し、その日のうちに自宅を経由して新幹線で大阪府堺市まで移動。そして大腿骨骨折から113日目となる6月5日。新城は国内最高峰のステージレース、ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージで優勝。

同大会で新城が優勝したのは2007年の最終日、東京ステージ以来だ。この伊豆ステージは12.2kmサーキットを10周する122kmで、獲得標高3,000mという厳しいコースでこの大会の勝利の行方を左右するレースと言われていた。過酷なサバイバルレースで第一集団が絞り込まれたが、新城はこの中に残っていた。そしてラスト600mから飛び出して後続を振り切った新城は両手を広げながら天を仰ぎ、観客の声援に応えながらゴール。

「調子がよかったし、ファンのみなさんの期待をすごく感じていた。今日は絶対に勝つと思って狙っていたステージで、自分の勝ちパターンで優勝できたことは本当にうれしい。怪我からの復帰を支えてくれたすべての人に、この勝利をささげたい」

ツール・ド・フランスでは2012年の第4ステージに続いて2016年の第6ステージで2度目の敢闘賞を獲得。結局のところ2009、2010、2012、2013、2014、2016、2017年と合計7回出場して全て完走。加えてジロ・デ・イタリアは2010、2014、2020、2021、2023年と合計5回出場して全て完走。さらにブエルタ・ア・エスパーニャは2015、2016、2019、2021年と合計4回出場して全て完走。

五輪の実績を加筆すれば2012ロンドン、2016リオデジャネイロ、2021東京に出場し、すでに2024年パリ五輪に4大会連続の出場を決めている。

2019年、7回目の開催となるツール・ド・フランスさいたまクリテリウムで新城が終盤に単独アタックを成功させ、ツール・ド・フランス総合優勝のエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス)、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ビスマ)を振り切って優勝した。

日本勢がメインレースで優勝したのは初めて。新城はシーズン序盤に大ケガを負ったが、終盤戦にレース復帰。世界選手権にも出場し、この日は積極果敢な走りを見せつけて、悲願の優勝を果たした。

残り2周で世界ランキング3位のヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)のスパートに反応した新城。先頭交代をしたときに後続との差を確認し、かなりの差があるとみて一気にアタック。フルサンもあっという間に引き離していく。
「アタックが早すぎたので、うわー、ゴールまで長いなと後悔しましたよ」(新城)

大歓声の中で残り1周を独走し、猛追してきたマイヨジョーヌのベルナル、マイヨロホのログリッチを振り切ってガッツポーズで優勝した。

「安堵感とうれしさと一緒に、支えてくださった多くの人たちの顔がたくさん、頭に浮かびました」


2013年はナショナルチャンピオンジャージでツール・ド・フランス出場 ©Pressports.com


2016ツール・ド・フランス第6ステージで敢闘賞 © Pressports.com


2019年のツール・ド・フランスさいたまクリテリウムで優勝 ©Yuzuru SUNADA

プロフィール

新城幸也

●国籍:日本
●生年月日:1984年9月22日
●所属チーム:バーレーン・メリダ(2019)
●現況:バーレーン・ヴィクトリアス所属選手
【主な戦歴】
●ツール・ド・フランス7回出場・全完走
●ジロ・デ・イタリア5回出場・全完走
●ブエルタ・ア・エスパーニャ4回出場・全完走
●ツール・ド・フランス第4ステージ敢闘賞(2012)
●ツール・ド・フランス第6ステージ敢闘賞(2016)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2019)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。
ダイヤモンド・オンラインにて「ツール・ド・フランス2024」現地レポートを連載中。 https://diamond.jp/articles/-/346280