ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#19【番外編】ニームのゴールは特等席…特別なシートでレースを満喫

24/7/19

ツール・ド・フランス2024の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介!

今年のテーマは、「さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載中です。

本日は番外編をお届けします。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


ニームのゴールは特等席…特別なシートでレースを満喫

第111回ツール・ド・フランスは第16ステージでニームへ。ニームは南フランスにあって、観光産業などで栄えた大きな町だ。ローマ時代に形成されたフランス最古の都市で、ローマのコロッセウムと同時期に建立された円形闘技場や古代神殿メゾンカレなどが建ち並ぶニームは、ツール・ド・フランスが訪れる時期になればセミ時雨が鳴きやまない。織物の町としても有名で、ジーンズ生地のデニム(デ・ニーム)はこの町の名前にちなんでつけられている。2017年にはブエルタ・ア・エスパーニャの開幕地ともなった。

フランス南西部に広がる地方はオクシタニー地域圏と呼ばれている。2016年の地方再編によって新しくできた名称だ。コントラストに富んだ大自然、さまざまな文化と歴史が入り混じった独特の魅力があって、日本人観光客の来訪も多い。

2019年にツール・ド・フランスが訪れたローマ期最大の水道橋、ポン・デュ・ガールもニームからそれほど遠くない。フランス南部には多くのローマ人の名残があり、2000年の歴史を肌で感じられるのがスゴい。ツール・ド・フランスはそんな歴史的建造物のすぐそばを通過するというスポーツイベントなのだ。

フランス南部の料理はオリーブオイルをふんだんに取り入れた色鮮やかなものが魅力。ニームの名物は塩タラすり身のブランダード、オリーブを使ったタプナード、パイ包みトゥルトなどがある。

戦後のツール・ド・フランスでニームにゴールしたのはこれまで10回だが、「ニームはいつも集団ゴールになる」とチームを率いる監督も選手も同様に口にする。2008年はマーク・カヴェンディッシュ、2014年はアレクサンドル・クリストフ、2019年はカレブ・ユアンがゴールスプリントで優勝している。

今年の第16ステージのゴールに設定されたニームでは、ニーム市観光協会から特別観覧席に招待された。ゲオ・ルフェーブルという往年の名選手の名前がつけられたスタンドだ。アクセスがいいように、一般の人が歩けるエリアに面していて、そこに警備員とアテンドのスタッフが1人ずついる。スマホ画面を見せて入場すると、それぞれの席にクレディリヨネ銀行のキャップが置かれていて、お土産として持ち帰ることができる。

ゲオ・ルフェーブルには、プロチームの日本人マッサーから招待券をいただき、以前も着席したことがある。今回はパリには行かないが、シャンゼリゼのゲオ・ルフェーブルは、7月14日のフランス革命記念日のために設営された特設スタンドがそのまま残されたものだ。

いいなと思ったことは、並木の日陰に席があること、飲み物が配布されること、そしてスタンド裏にトイレがあることだ。ツール・ド・フランス観戦においてこの3点は意外と心配な要素なので、特別観覧席の大きなメリットとなる。2025年はもちろんシャンゼリゼも復活するはずである。

ニームのゲオ・ルフェーブルはフィニッシュラインを通過後に、200mほど離れた位置にあり、肉眼では選手のスプリント勝負が目撃できない。ただし表彰台の正面で、登壇者をしっかりと目撃することができる。レース展開は表彰台に大型映像が設置されているので、それを観覧することになる。

レースはやはりニームなので大集団によるゴールスプリント勝負となり、アルペシン・ドゥクーニンクのヤスパー・フィリプセン(ベルギー)が優勝。戦いを終えた選手らが安堵の表情で目の前を通過していく。普段のレース取材とは異なる、観客者の目線で選手たちの表情をとらえることができた。



特別観覧席のゲオ・ルフェーブル ©Pressports.com


クレディリヨネ銀行のキャップがお土産 ©Pressports.com


表彰台の真正面 ©Pressports.com


フランス900泊にしてこれまでで一番いいホテルかも ©Pressports.com


アレーヌ(円形闘技場)。入場料はおとな10ユーロ ©Pressports.com


古代神殿メゾンカレ。入場料はおとな6ユーロ ©Pressports.com


朝や夕方以降はテラス席が気持ちいい ©Pressports.com


アレーヌの隣に考古学博物館がある ©Pressports.com



ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。
ダイヤモンド・オンラインにて「ツール・ド・フランス2024」現地レポートを連載中。 https://diamond.jp/articles/-/346280