ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#7 CHAMPION 2016 ペーター・サガン(後編)【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/7/5

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2016 ペーター・サガン

世界選手権3連覇、神出鬼没の異端児(後編)

ツール・ド・フランスでは4つの特別なジャージが用意されている。最も価値のある個人総合1位の黄色いジャージ、マイヨジョーヌ。山岳賞の赤い水玉ジャージ、マイヨブランアポワルージュ。そして新人王が着る純白のマイヨブランだ。

緑色のリーダージャージ、マイヨベールが1位選手に贈られるポイント賞は、連日のゴール順とレース途中のスプリントポイント通過順に応じて与えられるポイントの積算で争うもので、常に上位でゴールし続けるスプリンターが獲得を狙う特別賞だ。サガン以前の最多獲得数はドイツのエリック・ツァベルの6回だったが、サガンは最終的にこの記録を塗り替える7度の受賞を果たすことになる。

緑色のジャージはまさにサガンのイメージとなる。ピンチになると体が緑色のマッチョに変身する「超人ハルク」という米国のテレビ番組があったが、マイヨベールを着てトップフィニッシュしたサガンがハルクのマッチョポーズでウイニングポーズを決めたこともある。

一方で、超級カテゴリーの峠ではポイント賞争いにほとんど影響しないこともあり、サガンは先頭集団から遅れて制限時間内での完走を目指す走りに徹した。沿道で「サガン自伝本」を持ちながら応援していたファンが走り寄ってきたのを見つけたサガンが、ロードバイクでそのまま走りながらペンで表紙にていねいにサインをして、走り続けて追いかけていたそのファンに手渡すなんてシーンも動画で話題になった。

こんなツラいときでもファンサービスか! 余裕のある態度にサガンの底知れない実力が明らかになった瞬間だ。日本のみならず世界中で人気があるのはそんな行動をすんなりとこなしてしまうからだろう。

サガンは2015年から2017年まで世界選手権ロード3連覇。世界チャンピオンの称号である5色の虹色ジャージ、アルカンシエルを着続けることになるのだが、ステージレースで設定されたリーダージャージは第1優先着用が義務づけられている。だからナショナルチャンピオンジャージであろうとアルカンシエルであろうとそれを脱いで与えられたリーダージャージで走らなければならない。

2016年には第2ステージから3日間、2018年は第2ステージから1日だけ総合1位になり、アルカンシエルの上にマイヨジョーヌを重ね着した実績もある。アルカンシエルを誇らしく着ていたサガンも第2ステージで総合1位に立つとゴール後の表彰台でマイヨジョーヌにソデを通した。たった1日でもこのマイヨジョーヌを獲得するとそれだけで生涯の名誉になる。世界チャンピオンであるサガンにとっても初めての受賞で、壇上でうれしそうな仕草を見せた。

「マイヨジョーヌを手にしたのは初めてだ。とてもいいジャージだね。格別な思いがこみ上げてくる」と2016年の第2ステージ終了後にサガンは語っていた。

ウィニングポーズのパフォーマンスは2012年から見せているファンサービスで、世界中の人たちを喜ばせてくれる。ロード選手としての活動を終えた現在もどんなことをしてくれるのか、その挙動が気になってしかたない選手だ。


世界チャンピオンジャージを着るサガン ©A.S.O.


常に取材陣に取り囲まれる ©A.S.O. Pauline Ballet

プロフィール

ペーター・サガン

●国籍:スロバキア
●生年月日:1990年1月26日
●所属チーム:ティンコフ(2016)
●現況:ピエール・バゲットサイクリング所属選手
【主な戦歴】
●ツール・ド・フランス ポイント賞7回獲得(単独最多記録)
●ツール・ド・フランス区間通算12勝(2012,2013,2016-2019)
●世界選手権 ロードレース優勝3回(2015-2017)
●ツール・ド・フランス マイヨジョーヌ着用(3日)(2016)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2016)
●ツール・ド・フランス マイヨジョーヌ着用(1日)(2018)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。