ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#1 CHAMPION 2013 クリストファー・フルーム(前編)【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/6/29

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2013 クリストファー・フルーム

ムッシュー!さいたまクリテリウム(前編)

コートダジュールの象徴、ニース。大きな波が立たないという地中海随一のリゾート。ビーチにいても汗ひとつかかない爽やかさで、日本の海水浴場とはそのあたりが違う。こんな場所で過ごすのが本当のバカンスなんだと感じた。

2024年の第111回ツール・ド・フランスは、史上初めてのイタリア開幕だ。第1ステージの出発地フロランス(イタリア語でフィレンツェ)はフランスからそれほど遠くなく、そのため日本からはパリ経由で、6月27日お昼過ぎにニースへ。紺碧の海に囲まれたコートダジュール空港に到着した。

この空港には思い出がある。2013年の第100回ツール・ド・フランスがフランス領のコルシカ島で開幕し、その行き帰りに利用した。そして本土に戻って行われた第4ステージがニースだった。

その第100回ツール・ド・フランスで1回目の総合優勝を決めたのがクリストファー・フルーム。その年の10月にさいたま新都心で初開催されたツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに来日し、本大会に続いて優勝した選手だ。以来、さいたまクリテリウムに8回出場。日本文化をこよなく愛する。その温かみを知る日本のファンも多いはずで、いつしかさいたまクリテリウムになくてはならない存在となった。

フルームはケニアのナイロビで英国人の両親の間に生まれ、南アフリカで育った。プロ1年目の2007年にツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージで初勝利したときは南アフリカ登録のコニカミノルタチームに所属していて、当時はケニア国籍だった。レース後のインタビューで「暑さには強いんだ」と語っていた。そしてロンドン五輪直前に英国籍へ。ケニアに五輪出場枠がなかったからだ。

ツール・ド・フランスの記念すべき第100回大会となった2013年のツール・ド・フランスはフルームの圧勝だった。窮地があったとすればハンガーノックになったアルプス山脈のラルプデュエズ。そのゴール直後のテレビインタビューでは、「好感度を高めるためにわざと?」という質問さえ飛び出たほどで、フルームはキユーピー人形のような屈託のない笑顔で「そんなことはないよ」と返すのだった。

立ち居振る舞いは常に謙虚で紳士的。その一方で、勝てるところは全部持っていくという勝利への強い執着心を感じる。生粋の英国人であるのにケニアの首都ナイロビで生まれ、南アフリカで育ったという境遇をもつが、その人格形成において品行方正ながらもやるべきところは他に譲らないという二面性を築いていったのだろうか。

後編は明日公開!お楽しみに!



マイヨジョーヌを着用したフルーム ©A.S.O.


最終日の飛行機移動でリッチー・ポートと新聞を読む ©A.S.O.

プロフィール

クリストファー・フルーム

●国籍:英国
●生年月日:1985年5月20日
●所属チーム:チームスカイ(2013)
●現況:イスラエル・プレミアテック所属選手
【主な戦歴】
●ツール・ド・フランス総合優勝(2013,2015-2017)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2013)
●ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝(2011,2017)
●ジロ・デ・イタリア総合優勝(2018)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。