ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

NEWS & TOPICSお知らせ

#14 CHAMPION 2015 ジョン・デゲンコルプ(後編) 【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/7/13

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2015 ジョン・デゲンコルプ

北の地獄を制したタフガイ(後編)

2013年はバッテンフォールとパリ〜ツールでも優勝するのだが、難しい問題は2011年に揃ってトップチームに昇格したマルセル・キッテルとの住み分けだった。2012年から2015年まで同じチーム。キッテルがツール・ド・フランスで大活躍する一方、キッテルとともに出場した2014ツール・ド・フランスで、デゲンコルプは区間2位が2回だった。

相性のいいブエルタ・ア・エスパーニャでは2014年に区間4勝とポイント賞を獲得した。第4ステージ、デゲンコルプがゴール勝負を制して優勝。ツール・ド・フランスやドイツ選手権などの主要大会で2位ばかりだったが、ようやく一糸を報いた。

「コース終盤に苦手な上りがあったが、ここで全力を出さないと勝てない。明らかなギャンブルだったが、最後はなんとか勝てた。でも明日はもうヘロヘロだよ」とデゲンコルプ。最終的には5、12、17ステージのゴール勝負を制し、2012年の5勝に近づく勝ち星の量産に成功した。

「どの勝利も楽ではない。チームメートがゴール勝負に持ち込んでくれたので、自分の責任を果たすために全力で最後の200mを走った」

2015年にジャイアント・アルペシンのメンバーとしてさいたまクリテリウムに出場。ツール・ド・フランスで区間優勝できなかったデゲンコルプだが、ブエルタ・ア・エスパーニャでは最終ステージで大会通算10回目の区間勝利をものにした。さいたまクリテリウムでは前年のキッテルに続いてメインレース優勝。翌年にキッテルがエティックス・クイックステップに移籍し、デゲンコルプがチームに残る。そして2017年には米国のトレック・セガフレードに移籍。

2018ツール・ド・フランス。北の地獄と呼ばれる石畳の悪路が終盤に断続的に出現する危険なステージをデゲンコルプは待っていた。ジロ・デ・イタリアで1勝を記録するなど数々の戦歴を誇るスプリンターのデゲンコルプだが、ツール・ド・フランスでは勝てない。いつも栄冠まであとわずかだった。

「ほとんどの人はボクがもう終わりだと思っていたはずだ。4月のパリ〜ルーベでも落車でヒザをケガして、復帰まで4週間を要した。ボクが自暴自棄になりそうだったとき、支えてくれたのは家族だった」とデゲンコルプ。

石畳の路面は得意だ。終盤にマイヨジョーヌを着るBMCのグレッグ・バンアベルマート(ベルギー)ら3選手で抜け出すと、ゴール手前で主導権を握り、ガッツポーズでトップフィニッシュした。夢にまで見たツール・ド・フランス初優勝だった。


2022ツール・ド・フランス ©A.S.O. Charly Lopez


2023ツール・ド・フランスのデゲンコルプ ©A.S.O. Pauline Ballet


2023パリ〜ルーべ。落車で勝利を逃したデゲンコルプ ©A.S.O. Pauline Ballet


2015年のツール・ド・フランスさいたまクリテリウムで優勝 ©Yuzuru SUNADA

プロフィール

ジョン・デゲンコルプ

●国籍:ドイツ
●生年月日:1989年1月7日
●所属チーム:ジャイアント・アルペシン(2015)
●現況:DSMフィルメニッヒポストNL所属選手
【主な戦歴】
●ブエルタ・ア・エスパーニャ区間5勝(2012)
●ブエルタ・ア・エスパーニャ ポイント賞(2014)
●ブエルタ・ア・エスパーニャ区間4勝(2014)
●ミラノ〜サンレモ優勝(2015)
●パリ〜ルーベ優勝(2015)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2015)
●ツール・ド・フランス第18ステージ優勝(2018)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。
ダイヤモンド・オンラインにて「ツール・ド・フランス2024」現地レポートを連載中。 https://diamond.jp/articles/-/346280