ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#3 CHAMPION 2014 マルセル・キッテル(前編)【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/7/1

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Twitterでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに! https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2014 マルセル・キッテル

押しも押されぬ親善大使は女性ファンの推し(前編)

ブロンドヘアとその笑顔。今日もキッテル・キマッテル! ツール・ド・フランス区間14勝のスーパースプリンターである。表彰台やインタビューの際の、あらゆる言動がさわやかで、見ているこちらさえ自然に笑顔になってしまう。それほど素敵だ。2019年の引退後も、さいたまクリテリウムのアンバサダーとして来日。現役時代と変わらぬ好感度で、日本のファン、とりわけ女性を魅了し続けている。

その優等生的な言動はどこから来たものだろうか? プロデビュー直後はもうすこしヤンチャなイメージがあったはずだ。さいたまのこの親善大使を語る前にツール・ド・フランスにおけるドイツ選手の足跡に触れておかなければならない。

ドイツ勢がツール・ド・フランスで活躍するようになったのは、じつはそれほど古いことではない。東ドイツ選手が自転車競技で金メダルを量産してきた歴史はあるが、それはすべてトラック競技においてである。長距離走行のロードレースに挑戦するドイツ選手は少なく、「ツール・ド・フランスはドイツが制することのできない最後のスポーツ大会」と言われていた。

1990年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツ統合されると、それまでトラックレースでしか活躍の場がなかった東ドイツ勢が西側のプロロードチームに相次いで加入してきた。ツール・ド・フランスの勢力図は世界史と密接な関係があるのである。

「ドイツが制することのできないスポーツ」の呪縛を打ち破ったのが旧東ドイツ出身のヤン・ウルリッヒだ。1996年にドイツテレコムのアシスト選手としてツール・ド・フランス出場。エースのビャルネ・リース(デンマーク)の総合優勝に貢献するとともに、ウルリッヒ自身も総合2位となる。1997年にドイツ勢としてツール・ド・フランスで初めての総合優勝を遂げると、ドイツでのロード人気に火が付いた。

ところがドイツのツール・ド・フランス人気は一気に下降していく。有名選手のドーピング問題がきっかけだった。2011年から公共放送ARDがテレビ生中継を中止。2013年と2014年にキッテルは初日の第1ステージで優勝し、総合1位のマイヨジョーヌを獲得するのだが、その姿は母国にライブ中継されなかった。

キッテルは単に勝利するだけでなく、自転車ロードレースの魅力を母国に伝え、再び国民に振り返ってもらいたいという使命を帯びた。だから背負っていたものは普通の選手とは比較にならないほど大きかった。キッテルの並々ならぬ覚悟と勝利を具現化したことにより、2015年にARDがようやく放送再開する。さらに2017年は、ドイツのデュッセルドルフでツール・ド・フランスが開幕するまでになった。

2011ブエルタ・ア・エスパーニャで区間1勝して頭角を現し、2013ツール・ド・フランスの初日に優勝してマイヨジョーヌを着用。さらに最終日のパリも含めて合計4勝を挙げた。2014年はジロ・デ・イタリアでいきなり2勝したが、発熱によりリタイア。しかし7月のツール・ド・フランス初日に優勝してマイヨジョーヌを着用。パリを含めて合計4勝。余勢を駆ってツール・ド・フランスさいたまクリテリウムも優勝。日本でもファンクラブが沿道に陣取るなど一番人気のイケメンレーサーの存在が知れ渡るようになった。

後編は明日公開!お楽しみに!


2014年にマイヨジョーヌを着用 ©A.S.O.


マイヨベールのキッテル ©A.S.O. Bruno Bade

プロフィール

マルセル・キッテル

●国籍:ドイツ
●生年月日:1988年5月11日
●所属チーム:ジャイアント・シマノ(2014)
●現況:引退。さいたまクリテリウム・アンバサダー(2019,2022,2023)
【主な戦歴】
●ツール・ド・フランス区間通算14勝(2013,2014,2016,2017)
●ツール・ド・フランス マイヨジョーヌ着用(1日)(2013,2014)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2014)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。