ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#11 CHAMPION 2018 アレハンドロ・バルベルデ(前編) 【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/7/10

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2018 アレハンドロ・バルベルデ

さいたまを制した虹色の世界チャンピオン(前編)

7月7日はツール・ド・フランス期間中に必ずやってくる。日本では七夕だが、スペインではサンフィルミン祭りの日。ツール・ド・フランス5連覇のミゲール・インデュライン(スペイン)の出身地、バスク地方のパンプローナではあの有名な牛追い祭りが行われる。勇敢な男たちが首に巻いているのが赤いバンダナ。だから7月7日のスタート地点に、スペインのモビスターチームは選手も監督もスタッフも全員が赤いバンダナを巻いて登場する。

赤いバンダナが一番似合っていたのがアレハンドロ・バルベルデだ。スペイン南東部、地中海にも近いムルシア地方で生まれ育った。寒暖の差が激しく酷暑の夏と厳冬に見舞われる地域だ。「自転車選手にならなかったら? それは考えたこともないなあ。闘牛士? いやあ、こればかりは想像もつかないよ」と、かつてインタビューで答えていたことが印象に残っている。

2002年にケルメでプロデビューし、2004年はコムニダバレンシアナ、2005年からイリェスバレアレス。その後はチーム名がケスデパーニュ、モビスターと変わるもののチームを移籍することなく走り続けた。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュからブエルタ・ア・エスパーニャまで、自在な走りで制してきたスペイン屈指のレーサーである。

2006シーズンは伝統のワンデー大会、フレッシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを前年から連覇し、初めて世界ランキング1位になった。2008・2014年にも世界ランキング1位となるのだが、ツール・ド・フランスでは優勝候補といわれながら栄冠は遠かった。2006年も不意の落車に運悪く巻き込まれ、鎖骨を折ってリタイアを余儀なくされた。

「初めてツール・ド・フランスに出場した2005年は、ステージ優勝したものの故障が悪化して最後まで走ることができなかった。2006年も運がなかったと思う。走り続けたいという思いは強かったが、あそこでやめる以外になかった。これだけは残念だけどしょうがないよ」

その大会はチームメートのオスカル・ペレイロが絶対的エースのバルベルデにボトルを渡すアシスト役を務めていた。「最後まで彼のために走りたかった」とコメントしたペレイロだが、大会中盤に大きな逃げを成功させ、一時は総合1位に。最終的には逆転されたのだが、最終日のパリで総合2位の表彰台に立った。さらに数日後に表彰台の中央に立った選手がドーピング失格となったことで、ペレイロの名前は現在、歴代優勝者のリストに掲載されている。

バルベルデ自身はブエルタ・ア・エスパーニャで復帰し、大会中盤で黄金のジャージ(当時のリーダージャージは金色で、マイヨドロと呼ばれていた)を着用し、初優勝にばく進していた。しかし勝負どころでアレクサンドル・ヴィノクロフをエースとするカザフスタン勢の波状攻撃に遭って最終日のマドリードに到着したときは総合2位だった。

「ボクは総合2位でもとても満足している。たとえばペレイロの頑張りだ。ツール・ド・フランスで好成績を残した直後にもかかわらず、彼をはじめとしたチームメートがみんなボクのために走ってくれた。チームの協力があって、とてもまとまりのある連携がブエルタ・ア・エスパーニャでできたことにある意味で誇りを感じる」

それでも目標とするのはツール・ド・フランスだ。一番着たいジャージは「アマリリョ」。スペイン語でいわゆる「黄色」と言う意味。バルベルデの永遠の夢でもあった。

後編は明日公開!お楽しみに!



百戦錬磨の大ベテラン ©A.S.O. Thomas Maheux


2012ツール・ド・フランス ©A.S.O. Gautier Demouveaux

プロフィール

アレハンドロ・バルベルデ

●国籍:スペイン
●生年月日:1980年4月25日
●所属チーム:モビスター(2018)
●現況:引退
【主な戦歴】
●ツール・ド・フランス区間通算4勝(2005,2008,2012)
●リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝4回(2006,2008,2015,2017)
●ツール・ド・フランス マイヨジョーヌ着用(2日)(2008)
●ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝(2009)
●ツール・ド・フランス総合3位(2015)
●世界選手権 ロードレース優勝(2018)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2018)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。
ダイヤモンド・オンラインにて「ツール・ド・フランス2024」現地レポートを連載中。 https://diamond.jp/articles/-/346280