ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#10【番外編】サイクルシティ…自転車の数で優しい環境であるかを格付け

24/7/9

ツール・ド・フランス2024の開催期間中、SNSでツール・ド・フランス現地レポートをお届けしている、ライターの山口和幸さんのミニコラムをHPにてご紹介!

今年のテーマは、「さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー」。星の数ほどある伝説のストーリーから、テレビに映らない舞台裏まで。
現場取材30年の記者が21ステージにわたってコラムを連載中です。

本日は番外編をお届けします。
長年現地でツール・ド・フランスの取材をしている山口さんならではのコラムをお楽しみください!

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


サイクルシティ…自転車の数で優しい環境であるかを格付け

レストランやホテルを星の数で格付けするミシュランガイドを生んだフランスで、その町がどれだけ自転車にやさしい環境であるかを評価する「ビル・ア・ベロ」(『ツール・ド・フランス サイクルシティ』ラベル)という制度があり、世界レベルで広がりを見せている。ツール・ド・フランス主催者が考えた企画だ。最高格の自転車マーク4つは首都パリとオランダのロッテルダム、デンマークのコペンハーゲンなどが獲得。

自転車で走りやすい環境を世界各地の町がどれだけ提供できているか。そんな格付け制度の「ビル・ア・ベロ」がツール・ド・フランス主催組織の発案で2021年に始まった。ビルは町、ベロは自転車という意味のフランス語で、英語訳すればサイクルシティとなる。

フランスではミシュランガイド以外にも、きれいに花を飾り付けた市町村を格付けする「ビル・ド・フルーリー」という制度もあり、フランス政府も後援している。その町に入ったところに設置される町の名前の下に花の数が表示されるもので、最高格は花4つだ。いわばその自転車版というわけである。

第1回ビル・ア・ベロの規定は、1903年にツール・ド・フランスが始まってから、少なくとも1回はスタートあるいはゴールを務めた都市に立候補する権利が与えられた。そのためフランス以外にロッテルダムや英国のロンドンも対象となったわけだ。立候補は81都市になり、自転車通行に詳しい専門家グループが審査。自転車インフラの整備戦略、サイクリングをサポートするための具体的なアクション(学校での学習、意識向上キャンペーン)、地域の自転車クラブや団体が行う活動状況などが審議された。

「ビル・ア・ベロはこれまでの格付け制度よりもっとポジティブ思考です。自転車にとってもっといい町を作ろうというモチベーション向上が期待できるからです」と主催組織の担当者。
「例えば人口が300人しかいないルダンビエルは自転車マーク3つ。潤沢な予算を駆使したインフラ整備だけでなく、町の人たちの自転車愛も評価します」

都市によっては、「もっと自転車にとって魅力的な町にしたい」と初回のエントリーを見送り、1〜2年の整備期間をかけるところもあるという。

マーク4つは大都市が獲得したが、3つは2021年ツール・ド・フランスの開幕地であるブレスト、ニースなど18都市が獲得。2つはサンテティエンヌなど41都市、1つはカルカッソンヌなど20都市だった。

さらに女子レースのツール・ド・フランスファムのスタートあるいはフィニッシュとなった町にも立候補する権利が与えられ、4回目の開催となる2024年はクリテリウム・デュ・ツール・ド・フランスを開催した町も対象となった。2024年は24の自治体が申請し、このうち20自治体が自転車環境推進策を評価された。ヨーロッパ域外の都市では初めてさいたま市が自転車2台を獲得した。

国土が広大なフランスは隣町を訪ねるとき、クルマがなければ自転車を利用する。それだけフランス人にとって自転車は身近な存在だ。クルマが高速走行する主要道には並木や草地をへだてて自転車道が敷かれる。小さいころからこうして自転車を移動手段としてきた人たちが、クルマのハンドルを握る側になったとき、自転車の存在を尊重した運転を心がけてくれるのは自然の成り行きだ。

ツール・ド・フランス最高権威のクリスティアン・プリュドムは、「ツール・ド・フランスのチャンピオンと町の人たちが乗る自転車をイメージとしてリンクさせる。これが大事なことだ」と言う。
「ツール・ド・フランス出場選手が走る道は、毎日のように子供たちや通勤者がペダルをこいでいる同じ場所。ツール・ド・フランスがこれほど身近に感じられるものはない。ボクたちはもっともっと自転車の未来に貢献していきたい」と語っている。

自転車を毎日の移動手段として愛用している人の割合は、フランスでもここ数年で大幅に増加している。フランスの自治体やコミュニティの多くが電気やガソリンで動く交通手段の代替案として自転車利用促進に注力している背景もある。ツール・ド・フランスはそういったトレンドを見すえ、自転車ロードレースの象徴的イベントとしての役割に加えて、毎日のサイクリング利用の促進に取り組んでいこうとしている。



受賞した町に掲出される自転車マーク © A.S.O.


自転車マーク2台を獲得したバイヨンヌ © A.S.O. Jonathan Biche


カレーのサイクリングレーン


パリも自転車環境が急速整備


パリの除幕式。ピンクコートはアンヌ・イダルゴ市長 © A.S.O.


サイクルシティ認定都市マップ

さいたま市の『ツール・ド・フランス サイクルシティ』ラベル授与に関するお知らせはこちら



ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。
ダイヤモンド・オンラインにて「ツール・ド・フランス2024」現地レポートを連載中。 https://diamond.jp/articles/-/346280