ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム

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#8 CHAMPION 2017 マーク・カヴェンディッシュ(前編) 【さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー】

24/7/6

さいたまクリテリウム歴代覇者ストーリー

2024年に第10回大会を迎えるさいたまクリテリウム。これまで大会メインレースで優勝したのは自転車界のスーパースターばかり9選手だ。歴代王者の足跡を知ることで、さいたまクリテリウムの持つ価値観を再確認してみよう。(文/山口和幸)

Xでは山口さんの現地レポートをお届けしていますので、こちらもお楽しみに!
https://x.com/saitamacrite


CHAMPION 2017 マーク・カヴェンディッシュ

大会最多のステージ35勝を達成! メルクスを超えた!(前編)

あきらめなければ夢がかなう。幾度となく骨折したって、必死になればまた強くなれる。英国のマーク・カヴェンディッシュが2024ツール・ド・フランス第5ステージで前人未到のステージ35勝を達成した。全ての参加選手が伝説にその名を刻んだ瞬間に立ち会い、英雄の快挙をたたえた。

ツール・ド・フランスの最多総合優勝回数は5回で、フランスのジャック・アンクティルとベルナール・イノー、ベルギーのエディ・メルクス、スペインのミゲール・インデュラインが並んでいる。開幕前における最多ステージ優勝回数は34回で、こちらもメルクスとそしてもう1人が並んでいた。それがカヴェンディッシュだ。

カヴェンディッシュがアスタナ・カザクスタンの出場8選手に入った時、単独最多ステージ優勝回数となる35勝を記録するかどうかに注目が集まった。すでに39歳だ。残されたチャンスはもうそれほどない。

2021ツール・ド・フランス、カヴェンディッシュはこの年だけで4勝を挙げ、第13ステージでメルクスの不滅の大記録に並んだ。山岳ステージを挟んで、第19ステージ、そして最終日パリ・シャンゼリゼの第21ステージが平たんコースであり、1つでも勝てば前人未踏の新記録となった。当時でさえ36歳のベテランスプリンターが大記録に挑んだ。しかしその年はそれ以上勝利を重ねることができずに終わる。

カヴェンディッシュは2007年にドイツのTモバイルでプロデビューし、ツール・ド・フランスにも出場したが未勝利だった。しかし2008年の第5ステージで大会初勝利を挙げると、その年は合計4勝。2009年の大会はなんと6勝。さらに2009年から4年連続で最終日のシャンゼリゼで勝利している。英国マン島出身で、「マン島超特急」と呼ばれるようになった。

ツール・ド・フランスで1勝することはその選手の生涯に誇れる実績となる。たった1勝だが、またたく間に世界中にその名が報道され、「ツール・ド・フランスで1勝した選手」という肩書きで、その後の人生を送ることができる。それを複数回も成し遂げた選手はツール・ド・フランスで活躍した名選手として永遠に人々の記憶に残るはずだ。

自転車競技史上最強すぎて「人喰い鬼」とさえ呼ばれたメルクス。ツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアで最多5回の総合優勝、世界選手権プロ3勝、アマ1勝という偉大な実績を誇る。1964年に開催された東京五輪でもベルギー代表として参戦しているメルクスは常に勝利にこだわり、どんなレースでも2位以下に甘んじることを好まなかった。平たんステージでも山岳でも勝利しているので、平たんスプリンターのカヴェンディッシュとはまた違ったタイプだった。

カヴェンディッシュはさらに2010年と2011年に各5勝、2012年3勝、2013年2勝、2015年1勝、2016年4勝と勝ち星を積み上げていく。もちろん個人の才能だけでなく、チームメートがフォーメーションを組んでゴール勝負の牽引役をしっかりと担っていたからこその白星の積み重ねだった。


マイヨベールでステージ優勝 ©A.S.O. Charly Lopez


母国で開幕した2014年は初日でまさかの骨折リタイア ©A.S.O.


2016年はマイヨジョーヌを獲得 ©A.S.O. Alex Broadway

プロフィール

マーク・カヴェンディッシュ

●国籍:英国
●生年月日:1985年5月21日
●所属チーム:ディメンションデータ(2017)
●現況:アスタナ・カザクスタン所属選手
【主な戦歴】
●ツール・ド・フランス ポイント賞(2011, 2021)
●世界選手権 ロードレース優勝(2011)
●ツール・ド・フランス マイヨジョーヌ着用(1日) (2016)
●ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム優勝(2017)
●ツール・ド・フランス区間通算35勝(大会最多記録) (2024)


ライター/山口 和幸 Kazuyuki Yamaguchi
ツール・ド・フランス取材歴30年のスポーツジャーナリスト。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に講談社現代新書「ツール・ド・フランス」、「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)。